事例紹介 
株式会社東京商工リサーチ様

「TSR事業の独自性・優位性」と「柔軟に進化するクラウドサービス」で確実に高付加価値を生み出す

株式会社東京商工リサーチ(TSR)様は、1892年(明治25年)に「商工社」として創業された国内最古の信用調査会社です。提供する企業データは、商取引をする上での信用調査やマーケティングデータとして活用されています。また、「倒産」という言葉をはじめて定義付けたのがTSR様であり、現在まで国内で唯一、一貫した定義と集計を継続。「企業倒産状況」は重要な指標としてマスコミ報道や官公庁の各種統計にも活用されています。さらに、アメリカの信用調査会社Dun & Bradstreet(D&B)との業務提携により、世界最大級(全世界240以上の国、4.8億件超:2022年8月現在)の企業データを提供。日本におけるD&B商品・サービスの唯一のプロバイダーであり、世界的に普及している企業コード「D-U-N-S® Number」の日本国内における発行管理業務も行っています。

キヤノン電子テクノロジーは、2010年にTSR様に対して販売管理システム(現在のentrance Pretecの前身)を提供し、これ以降、同社における数々のシステム開発に携わっています。この度、当社が開発に携わる「TSRクラウドサービス」が展開されるにあたり、開発の狙いや展望をお聞きしました。

企業データに対するニーズは「与信調査」から「マーケティング活用」に

「東京商工リサーチは1892年に『商工社』として創業しました。その名のとおり商工(商業と工業 / 商人と職人)の信用調査会社です。明治時代の当時は、企業の信用度はおろか、その企業が存在するかどうかさえも今のように容易には判別しにくかった時代です。そのような時代から企業を調査し、一貫性のある客観的なデータとして可視化することで企業間取引が円滑となるよう努めてきました。

TSRの事業は企業データの調査と提供が中心ですが、提供する企業データが持つ意義は大きく分けると『与信情報』と『マーケティングデータ』の2つになります。

1つ目の与信情報については、『取引企業の信用度や供給力を知りたい』という従来からのニーズに応えるもので、評点やリスクスコアを含む企業データとして提供しています。なお、この評点やリスクスコアはあくまで『基準』であるため、ご利用いただくお客様には必要に応じて重みづけをしていただくなどしています。

河原 光雄 氏

株式会社東京商工リサーチ
代表取締役社長 河原 光雄 氏

もう1つのマーケティングデータについては近年ニーズが増加していますが、マーケティング分野におけるデータ活用が進む米国に比べて、日本の、特にBtoB企業のデータ活用はまだまだ遅れているという事実があります。中には、顧客数や新規取引の引き合いも多く、それらの豊富な情報を整備したデータベースを保有し活用することで事業成長に効果を出している企業も存在しますが大企業が中心です。このため、日本企業全体の99.7%を占める中小企業にこそ、企業データをマーケティング分野で活用してもらうことが、日本の発展にもつながると考えています。

データ活用を進めるうえでは活用できるデータベースづくりが第一歩であり、まずはデータ整備が重要です。しかし、各企業が独自に持つ取引先情報には、旧商号、正式社名と通称名など同じ企業が重複登録されていることがあります。またグループ企業が一元化されていないことや企業情報が最新化されていないという状況も見られます。

これを活用できるデータにするためにTSRが提供するマスター・データ・マネジメント(MDM)支援ツールで取引先情報のクレンジングと名寄せをしてみると情報が半分くらいなることもあります。そこでTSRは今後、データの提供のみならず、MDMを含めた“データを活用できるソリューション群”を新たな価値として提供していきます。」(河原氏)

企業データ活用のニーズにまるごと応える「TSRクラウドサービス」

常盤 徹 氏

株式会社東京商工リサーチ
システム本部 副本部長 常盤 徹 氏

「近年、企業データ活用に関しては、その必要性と共にニーズの多様化がますます進んでいると感じています。一方、それに伴う自社での企業 / 顧客マスターの維持・管理とシステム投資への負担を軽減するため、外部サービス(クラウドサービス / SaaS / ディストリビュータ)への期待が高まってきています。そこでTSRとしては企業データの提供のみならず、その活用も視野に入れたソリューション群を提供することで、TSRが独自調査する企業データの品質 / 鮮度 / ボリュームの圧倒的優位性をもって、お客様へ高付加価値・高品質なサービスの提供が可能になると考えました。

TSRはこれまで『レポート(PDF)』『データベース(データ)』『オンライン(ECサイト:tsr-van2)』を軸とするデータ提供ビジネスを主体としてきましたが、システム本部として、まずは既存の商品群を高品質かつスピーディーに提供するためにデータベースシステムの再構築と商品提供ワークフローの一本化を案件管理システムにより実現し、つぎに、データ活用のニーズが高い3つのエリアにおいて、クラウドサービスを展開すべく順次構築を進めてきました。」(常盤氏)

  • マスター・データ・マネジメント(MDM)エリア:マスター正規化、取引先情報とTSR企業データの連結
    セールス&マーケティングエリア:企業・事業所の関連 / 取引情報に基づくターゲットの抽出
    与信管理エリア:与信限度額・各種指標に基づく与信管理ワークフロー実現
集合写真

お客様とTSRの双方にとって便益が高いシステムが、持続的な高付加価値提供を可能に

「『TSRクラウドサービス』がもたらすメリットは『コスト面』『サービス面』『ビジネス面』にわけて考えられます。

【コスト面】クラウドサービス活用によりお客様サイドでのシステム構築費用の大幅な削減が期待できます。また、ひとつのシステムで複数のお客様をサポートすることによりTSRは維持管理・メンテナンス費用が削減できます。

【サービス面】これまでのデータベースサービスにおいては、お客様が必要とするデータをお客様が必要とするレイアウト等に変換しお客様システムに落とし込む必要があり、手間とともに時間がかかりリアルタイム性(/鮮度)が失われていました。『TSRクラウドサービス』は、マスターのマッチング、データの検索、データ構成(データカテゴリー)の決定および生成が全て自動化されており、また定期的に企業データもアップデートされるためお客様にとって精度の高い分析・評価が可能となります。

【ビジネス面】クラウドサービスがお客様業務に組み込まれることにより、TSRは継続的なデータビジネスの確保が期待できます。」(常盤氏)

クラウドサービス展開におけるスピード感と品質をキヤノン電子テクノロジーに期待

「キヤノン電子テクノロジーさんとは、これまでに業務システム(販売管理システム、案件管理システム)およびソリューション(インターネット企業情報サービス『tsr-van2』の付加価値サービス群:T-WATCH / WorldBase online / TSR与信限度額レポート 等)の開発において継続的に取引させていただいており、プロジェクト管理・品質・運用維持管理において期待通りの成果を出していただいています。

クラウドサービスの展開においては、構想や高機能の追及に期間をかけ過ぎると開発完了時点でのサービス自体の陳腐化、もしくは顧客のニーズからそれてしまう事が起こりがちです。そのため、あくまで短期サイクルでの開発~リリース(市場投入)そしてお客様の活用状況をトラッキングしながらクイックな機能拡張を実現することがビジネスおよびお客様満足度向上において非常に重要と考えています。そこで、業務理解度が高くスピードと品質を両立できるキヤノン電子テクノロジーさんを、このチャレンジを共に実行し確実な成果を残す主要開発パートナーとして位置づけさせていただきました。」(常盤氏)

常盤 徹 氏
  • tsr-van2:国内外の企業情報をオンラインで取得できる会員サービス
  • T-WATCH:特定企業の変動情報モニタリングサービス
  • WorldBase online:海外企業情報のサマリ(基本情報、財務情報等)を提供するサービス
  • TSR与信限度額レポート:取引先や自社の財務状況から与信限度額を算出するサービス

顧客視点のソリューションを提供していくために、社内システム整備も

「『TSRクラウドサービス』を展開していくにあたり、この仕組みを利用することで得られるメリットをお客様に対し効果的に伝えていく必要があります。TSRはデータを売ることには慣れており得意とするところですが、ワークフローを含めた業務パッケージを売ることについてはこれから強化していくべきところと感じます。今後はソリューション提案型の営業スタイルも確立すべく営業部門や経営層との連携も深めていきたいと思います。

さらに『TSRクラウドサービス』整備の目途が立ったのちにも、業務システムのデータ活用よる経営指標の可視化、CRMの最適化、AI活用による業務の自動化など、トライしたいことは数多く残っています。」(常盤氏)

TSRの最優先はデジタル活用

河原 光雄 氏

「『データ』はTSRの最重要資産です。そしてデータは鮮度が命であり、真に価値のあるデータをご提供するためには日々の更新が欠かせません。TSRは企業の生い立ちから現在の業容に至るまでを収録していますが、お客様のビジネスに役立つ鮮度のあるデータをご提供しています。

またお客様にとって自社の企業コード『D-U-N-S® Number』を取得されることは有益です。TSRが業務提携するD&B社が発行している『D-U-N-S® Number』は、各国政府および国際的な機関により推奨される世界標準の企業コードです。特にグローバル経済下での電子商取引において取引先企業を判別するために企業コードの重要性は極めて高く、『D-U-N-S® Number』を取得することによりビジネスの成長促進が期待できます。

さらにTSRは東京大学、一橋大学、早稲田大学との学術研究、あるいは東京大学エコノミックコンサルティング株式会社、監査法人、ファイナンス・リース企業等と新しいサービスの研究開発・共同提案も推進しており、社会の役に立つ研究に生かしてもらうためのデータ提供も行っています。さらに、レポートの強化や、事業継承支援など、日本経済を支える新たな取り組みも進めています。

デジタル化が進む今、経営者として最優先することはやはり『デジタル活用』です。かかる費用や組織体制の調整は必要ですが、これらはコストではなく投資であり、何よりもニーズに対してスピード感をもって対応していく必要があります。『TSRクラウドサービス』も、持続的な価値創造のための投資を最優先にした結果です。そしてスピード感があるキヤノン電子テクノロジーさんには、引き続きシステムの側面から支援していただくことを期待しています。

今後も継続的なIT投資によりデータから生まれる価値を高め、お客様満足度の向上を追求してまいります。」(河原氏)

集合写真

【左】システム本部 副本部長 常盤 徹 氏
【中央】代表取締役社長 河原 光雄 氏
【右】取締役 / 管理本部長 / 経営企画室・システム本部担当 田中 現 氏

お客様情報

株式会社東京商工リサーチ様

株式会社東京商工リサーチ様

【創業】1892年(明治25年)8月
【売上高】222億3,900万円(2022年3月期)
【経常利益】43億円(2022年3月期)
【従業員数】1,988人(2022年3月末現在)
【Web】https://www.tsr-net.co.jp/

  • 本事例に記載の肩書や固有名詞等は初掲載当時のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。

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